ボールに働く力 |
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ボールに働く3つの力
「トラックフレアーの大きいボールほど曲がりも大きい」というのが、今や常識的に思われています。皆様方もそのこと自体異論はないと思います。けれども実 際の力の作用としてはトラックフレアーを起こす力と曲がる力は別に考えなくてはいけません。何故ならば例外的ではありますが、フレアーが大きくても曲がら ないボールも存在するからです。
というのはボールを曲げるための元になる力はボールとレーンの摩擦力だからです。摩擦の低いカバー素材にフレアーの大きく出るコアを組み合わせた場合、回 転軸がブレ、トラックフレアーは大きくなりますが、軸移動の量が小さくなり、結果曲がらないという変わった現象が起きてきます。実際にはこんなボールを作 ることに意味を持たないので、ボールメーカーがあえて製造することはありません。ですから皆様が体験することはほとんどできないと思います。
又、フレアを起こす原動力となるのはウエイトブロックの遠心力、すなわち動的バランス(ダイナミックバランス)の作用なのです。従ってそれぞれの作用に対 する元の力が違いますので、フレアと曲がりは別々に考える必要があるのです。ところが通常は軸移動とフレアは同時に起こりますので、フレアが広がることで ボール表面の新たな部分がレーンに接するため、摩擦が大きくなり、結果軸移動を早め、曲がりを大きくする作用となっているのです。
と言う事でフレアと曲がりは無関係ではなく、密接にかかわっているのですが、大元の力は異なっていることをご理解下さい。そこでボールにかかる力を表−1にまとめてみましたので、その力の作用について解説いたします。 |
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(1)摩擦 |
ボールのリアクションに影響を与える力の70%を摩擦力が占めています。例え摩擦力の大きい表面素材を採用しているボールでも、レーン上のコンディショ ナーが多量でかつ、長い距離に塗布されているコンディションでは摩擦力は小さくなり、ボールを曲げる作用としての軸移動も起きにくくなることは言うまでも ありません。キャリーダウン(オイルが先に伸びる)したコンディションでのバックエンドでのオイルの反応が敏感であったり、影響を受けにくかったりするの は表面素材の性質により決まってくる要素なのです。これらすべてがボールに与える摩擦力の作用ということになります。 |
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(2)重力 |
重力の作用としては、長い間注目されてきた静的バランス(スタティックバランス)の作用です。現在の評価としてはボールパフォーマンスの影響力全体の5% 以下と考えられています。何故ならばドリル後のバランス規定があり、その範囲でしか効果が期待できないからです。静的バランスの作用は回転軸の移動を早め たり遅らせたりする作用で、ジャイロ効果に関わる影響力をもたらします。
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(3)遠心力 |
遠心力の作用としては、回転軸をぐらつかせフレアを大きくする作用があります。これを動的バランス(ダイナミックバランス)と言います。動的バランスのポ テンシャルはボールのコア形状により決まりますが、そのポテンシャルを最大に引き出すか、最小に抑えるかは、回転軸に対するコアの向き(コア/アクシスア ングル=C/A)により決まりますので、ドリルの際のレイアウトにより調整が可能です。 但しボールパフォーマンスを決定する要素としては15〜20%であることを理解しておいて下さい。 |
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(4)垂直抗力 |
ボールがレーンと接するときにボールがレーンを押す力の反作用として、レーンがボールを押す力なのでボールの動きには何ら影響を与えないため、無視して考えてよい力の作用です。 |
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表−1 |
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従って(1)〜(3)の力以外にボールにかかる力は存在しません。そしてこれらの力に影響を与える要素としてバランスに関係なく、回転し難さの尺度として慣性モーメント(RG)を考慮する必要があるのです。
慣性モーメントは回転軸の移動に影響あるジャイロ効果にも影響があり、高慣性になるほど軸移動が遅れ、軸移動の速さとは反比例の関係にあるのです。
ボールが走る、切れる、という表現もすべてこれらの力の作用を受けていることをご理解下さい。
次回はボールの物理特性を読もうです。 |
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