そこでこのウエイトのロスを埋めるためにボールメーカーはボールの上部を重くするための様々な方法を開発したのでした。ある場合には上部の密度を高くして重 量を増やしたり、上部に重いブロックを埋め込んだりしてバランスのロスを防ぐアイディアが一般的になってきました。こうしてボールの上半分を重くすること を通称「トップウエイト」と呼ぶようになったのです。そしてトップウエイトを多く残すことがピンに当たったときの軌道のズレを減少させる新しい要素と考え られるようになったのです。
トップウエイトの部分にドリルされたとき、ボールの上部の重量は底部にバランスされて十分な重量が残るようになったのですが、指のサイズによってマイナス される重量がまちまちになることから、残る重量バランスの許容基準が設定されることになりました。
ABC(アメリカボウリング協会)により最初のバランス規定ではボールの上下の重量差は3オンス以内と決められました。これは明らかに指の太さの大小から 割り出された基準で、結果としてプラスマイナス6オンスの許容範囲がバランスとして利用できるということになるわけです。
これらの現象に基づいてボウラーとドリラーはなんとか許容範囲内でバランスを生かせないかと考えるようになり、規格内最大のトップウエイト3オンスを残 すようなドリルをするようになったのです。さらに偶然ではあったのですが、ドリラーはボールの重量バランスが僅かに移動することで、ボールリアクションに 変化が起きることも気づいてきました。そしてドリルに際して左右の重量バランスのズレを「サイドウエイト」と呼ぶようになったのですが、こうなってくると いつも正確にボールのセンターにドリルできなくなり、左右のドリル許容範囲としてサイドウエイト1オンス以内を認める規定ができたのです。
そしてバランスの左右のズレがもたらす効果が新たに発見され、右投げボウラーの場合、サイドウエイトの右側をプラスさせることでボールの曲がりがより強く なりピンに当たった時、逸れない、という現象が分かってきました。反対に左側をプラスさせるとボールの曲がりを抑え、ピンヒットが弱くなることも分かって きたのです。そしてライトサイドウエイトを「ポジティブウエイト(良いウエイト)」、「レフトサイドウエイト」を「ネガティブウエイト(悪いウエイト)と 呼ぶようになってきました。
これらの許容範囲はドリルの際にバランスの中心にドリルすることの現実の難しさに対応するための規定で、当然左右だけの問題ではなく、前後のバランスのズレも同様の許容量が必要となり、前後のバランスのズレも1オンス以内とABCが定めたのです。
そしてフィンガー部分を含む上部半分の過剰ウエイトを「フィンガーウエイト」、サム部分を含むボール下部半分の過剰ウエイトを「サムウエイト」と呼ぶようになりました。
ボウラーとドリラーはフィンガーウエイトがボールの曲がる時点を遅らせて、さらにピンに対して食い込みを強くするということが理論的に分からないながら、経験的に分かるようになり、反対にサムウエイトは逆の効果があることを発見したのでした。
このようにして、ABCのバランス規定でドリルすることが確立されたのですが、1996年新たなバランス規定として改訂され現在に至っています。
次回は現代バランスの主役ダイナミックバランスについてお話します。
|